まえがき
日本発スタートアップの成長の裏側に迫るgrowth hack japanインタビュー企画 『hacktalk』。
記念すべき第1回目のhacktalkは、現在までにKenstagramやSlideStoryを含む10以上の人気iOSアプリを世に送り出してきたスタートアップ、株式会社ナナメウエの石濱嵩博さんをゲストにお迎えしてお送り致します!
石濱さんと筆者である私は23歳の同い歳。
実は私、石濱さんとは去年の冬にアメリカのボストンでお会いしていて、その後もフェイスブックを通じてナナメウエの活躍を追い続けておりました。
ちょうどgrowth hack japanのインタビュー企画に本腰を入れて取り組むことになったタイミングでナナメウエが3,000万円の第三者割当増資を受けたこともあり、記念すべき第1回目は成長目覚ましいナナメウエしかないと決めていたんです。
顔見知りということもあり和やかな雰囲気の中インタビューは進みましたが、開発の裏側からナナメウエが実践するユーザー獲得・保持術まで、充実したインタビューをお届けします!
インタビューの流れ
・スタートアップ立ち上げから現在まで
・開発の舞台裏
・ナナメウエが実践するユーザー獲得/保持術
・今後の展開
・スタートアップ立ち上げを志す皆様へのメッセージ
・インタビューを振り返って
・ナナメウエから正社員及びインターン募集のお知らせ
スタートアップ立ち上げから現在まで
—ボストンでお会いした時はまだ起業していませんでしたよね?
あの時はまだアメリカのコンセプトアートハウスという会社でインターンをしていて、起業したのは2013年の5月になります。2013年に入ってから共同設立者の3人でチームとして動き出して、5月の段階で創業者同士お金を持ち合って起業に至りました。
現在は正社員・インターン生を含む7人で制作を行っており、僕はCCO(チーフ・クリエイティブ・オフィサー)としてアプリの開発と管理の統括を担当しています。CEO(瀧嶋篤志氏)もエンジニアではありますが、出資が決まってからは採用とか外回りに割く時間が多くなっているので、コンテンツに関しては僕を筆頭に開発と改善を進めています。
—やっぱり3,000万円という大きな出資が決まってからは心境に変化がありましたか?
何者かに追われる夢をよく見るんです。(笑) それが何者なのかはいまだにわからないんですけどね。(笑)
今回頂いた出資金はヒトへの投資を中心に半年くらいで使い切る予定なので、その時点で次の出資が決まっていなければ終わり。失敗しても死ぬ訳じゃありませんが、どうせやるなら死ぬ気で臨むしかないなと思っています。
開発の舞台裏
—ナナメウエのスライド動画作成アプリSlideStoryは大きなヒットでしたね。
10月6日にローンチして、12月半ばで45万ダウンロードを達成しました。動画アプリで45万はあまり多くはありませんが、
前作の(ケンタウロスと一緒に写真が取れる)Kenstagramは1日で1万リツイートされたんですけど、3日くらいで力尽きてしまったので。(笑)
—ナナメウエが過去に発表したアプリを見ると日常にちょっとした楽しみや彩りを加える遊び心のある作品が多いですが、インスピレーションはどこから来るんですか?
開発の根底にあるのは自分たちが使って楽しいアプリを作ること。ユーザー目線ももちろん大事ですが、最終的には自分たちの目線を大切にしています。
Kenstagramはたまたまネットサーフィンをしていたときに見つけた画像に一目惚れして、1万円くらいで購入したのがきっかけなんです。
最初はケンタウロスの顔に自分の顔を当てはめるアプリを開発していたんですが、これがイケてなくて。(苦笑)その後色々試していく中で、取った写真にケンタウロスが勝手に現れたら面白いなっていう発想に行き着いたんです。いくつかKenstagramを真似したアプリが登場しましたが
SlideStoryに関しては、画像アプリのKenstagramとInstaMusicに続いて次もヒットさせたいと思ったタイミングでVine等の動画アプリが流行り始めたことがきっかけでした。テレビ離れが進んでウェブで動画を見る時代が来てるし、実際にYoutubeの広告収入も年々上がってるので、
ナナメウエが実践するユーザー獲得・保持術
—その読みが正しかったことはもちろんですが、数ある動画アプリの中で45万ダウンロードを短期間で達成できた秘訣はどこにあったと思いますか?
1つはプロのレビューアーに効果的にアピールできたことですね。
ただ単に「アプリを作ったのでレビュー書いてくれませんか」ってレビュー会社にアプローチするんじゃなくて、ライターの手間を考えて「コピペして今すぐレビューにしてもらえる文章」をライターの個人メールアドレスに送ってあげる。レビューを書く人によって口調が違うので、各ライター向けに文章を微調整して、合計35社くらいにアプローチしましたね。
海外ユーザーがSlideStoryを使ってくれた影響も多いです。各言語への対応は gengoっていう翻訳サービスを使っているのですが、1言語あたり1万円くらいで対応できるからこれはかなりオススメです。
海外のレビューアーとも個人的にツイッターで交流して、日本だけじゃなく諸外国でもレビューを書いてもらえるように努力しました。
他にも、レビューに変なことを書かれるとアプリのダウンロード数がすぐに落ち込むので、Parse.comなどのツールを利用して迅速にクラッシュに対応したり、些細なことでユーザーが不満を持たないようにQ&Aページをアプリ内に設けたりもしています。
こういった対策の一つ一つがどれだけダウンロード数に貢献しているかは分かりませんが、1つでも多くの人に届けば良いという思いで細かな対応を心がけています。
—技術的な秘訣はありましたか?
開発スピードが弊社の強みの1つです。
2~3人のチームで、クオリティを担保したプロダクトを2~3ヶ月で作れるチームは国内に多くありません。
面白いと思ったらすぐにプロトタイプを作り、ダメだと思ったらすぐ諦めて次の開発に移る。少人数のチームでプロダクトの全てを改善することは無理なので、ユーザーの反応を見ながら要改善点に優先順位をつけて、ローンチ後も絶えず試行錯誤を加えることが必要だと思います。
意見がぶつかることも日常茶飯事ですが、そこに時間を取られすぎてもダメ。最後の最後まで話しが平行線の場合は自分の考えをきっぱり諦め、CEOの決定に従うというルールを設けて、時間のロスや精神のロスを減らしています。
また日頃からアプリを多く触ることが重要です。日本のAppStoreではアプリを広めるためのマーケティングを、米国のAppStoreでは流行のデザインや実装方法を特に注意深く見ています。最近では中国やタイのAppStoreもチェックしています。少なくとも日本と米国のランキング上位200位くらいは毎日チェックすべきだと思います。
データマイニングも圧倒的な経験があるわけじゃないから最善を尽くせているかは疑問が残りますが、Google Analyticsの数値と自分たちの感覚を信じて日々実践しています。
SlideStoryだったら、
- ・BGMの利用頻度 (よく利用されるBGMの傾向に合わせて新しい楽曲を製作)
- ・画像フィルターの利用頻度 (ユーザーの嗜好に合わせてフィルターを微調整。使われてないフィルターは排除)
- ・SNSプラットフォームごとのシェア率 (ターゲット層の明確化)
とかを重点的に見ていますね。
今集まってるデータは今後のマネタイズに向けたデータとしても有効に使ってます。ニーズって結局分析でしか見えてこないですからね。
今後の展開
—ベンチャーキャピタルからの出資も決まったし、マネタイズも意識していくと思いますが、海外進出も含め今後はどんなビジョンを描いていますか?
マネタイズの方法は口外出来ませんが、今までやってきたことを軸に収益性を高めていくつもりです。アプリにはとらわれず、もっと視野を広げて、常に社会の流れを読みながら大きなプロジェクトに取り組んでいきたいです。
海外進出も考えてはいますが、今すぐシリコンバレーを目指したりとかいうつもりはありません。 例えばベトナムの方が片言の日本語で日本に乗り込んできても、相手にされないじゃないですか? これは僕達が今アメリカに行っても同じこと。まずは日本、そしてアジアへと裾野を広げて、最終的に北米にも進出できればいいなと思います。
ただ、今後どんなにスケールしてもユーザーの反応は最大のモチベーションであり続けると思いますね。
「SlideStoryを使って動画をプレゼントしたら彼女が喜んでくれました」って声を聞いた時も、Kenstagramを電車で使ってた女子高生が「キモッ!」って言うのをたまたま聞いた時も(笑)、まさに自分たちが欲しかった反応を実感出来た時は3日間くらいずっと興奮が冷めないですから。
スタートアップ立ち上げを志す皆様へのメッセージ
—最後に、growth hack japanの読者の中にはスタートアップ立ち上げを志す方も多いので、是非メッセージをお願いします。
自分も走り始めたばかりなので、まだまだ
よく自分の人生をRPGに例えて話すんですけど、一度就職を経験してから起業しても、在学中や卒業直後にすぐ起業しても、それはゲームの進め方次第だからどちらでも良いと思うんです。
例えばポケモンで四天王を倒すことが、起業する上でのゴールだとするじゃないですか。四天王自体も手強いのですが、他にもタケシとかカスミとかジムリーダーもいるし、真っ暗な洞窟とか、お化けの塔とかをクリアしていかなければならない。
就職するのは、最初の草むらでレベルをあげることに少し似ていると思う。弱い敵を倒して、レベルをあげる。レベルが高くなれば、ジムリーダーも簡単に倒せるようになる。
でも決められた人生の時間の中で四天王を倒さなきゃいけないとき、勝率をあげるために経験値をあげるよりも、破れてもいいから挑戦をし続ける方がいいんじゃないかって思うんです。ゲームと1つ大きく違うのは、「実社会では負けても経験値がつく」ことですから。
負けて負けて、でも最後に勝つ。とにかくぶつかって最後に勝つ。うん、頑張ります。(笑)
インタビューを振り返って
株式会社ナナメウエCCO石濱さんを迎えてお送りした第1回 hacktalk。
ユーザー目線を大切にしながらも製作側の価値観を曲げないナナメウエのコンテンツに対するあくなき追求心が伝わってきた有意義なインタビューになりました。
出資も決まり、更なる活躍が期待されるナナメウエ。
今後はどのような形で私達の日常に楽しみや彩りを加えてくれるのか本当に楽しみです!
貴重な時間を頂戴した石濱さん、オフィスであたたかく迎えてくれたメンバーの皆さん、本当にありがとうございます!
ナナメウエから正社員・インターン募集のお知らせ
現在ナナメウエではサービス拡大に伴い、正社員とインターンを募集しています!!
具体的には、
*インフラの知識が豊富
*Objective-cでの開発経験
*やる気がある!!!!
のうち、1つでも当てはまる方。ぜひ一度ランチ等でお話させてください^^
一緒に世界中の人の心に感動を与えるプロダクトを作りませんか?