バイラルメディア

日本でも流行の兆しを見せる、「ソーシャルメディア上の共有をレバレッジにページビュー数を稼ぐメディア」の総称です。

アメリカのUpworthyやViral Novaの急激な成長により日本でも続々と新たなバイラルメディアが登場していますが、安易な発想でバイラルメディアに多くのリソースを費やすことは極めて危険と言えるでしょう。

本日は、バイラルメディアに参入する前に必ず心得ておきたいバイラルメディアが抱える2つの危険性と、競争が激しさを増すことが予想される中で突出したサービスを作り出すための心得を実例を交えてご紹介致します。

バイラルメディア乱立の背景

バイラルメディアが続々と登場する理由は、主に以下の2点の魅力に起因するといえるでしょう。

①キュレーション

「バイラルメディア」と呼ばれるほとんどのウェブサイトのコンテンツは、YouTubeなどの他サイトから動画や画像をキュレーションしたものになります。

世の中にごまんと存在するコンテンツをキュレーションすることで、ローンチして間もないメディアが必ず直面する「コンテンツの乏しさ」を回避できるのです。

②難しいプログラミングは不要

バイラルメディアを立ち上げるのに、難しいプログラミングは必要ありません。

基本的には、

  • 動画コンテンツ
  • ソーシャルプラグイン

sharebutton

の2点があればバイラルメディアとして成立することができるため、ワードプレスの使い方さえ分かれば誰でも簡単にバイラルメディアを製作出来てしまうのです。

バイラルメディアの種類は様々ですが、まだ見識の浅い方々のために以下にいくつか日本における例を挙げておきましょう。

① dropout

社会問題に対する意識の向上を主な目的としたバイラルメディアです。

② CuRAZY

笑いをテーマにしたバイラルメディアです。

③ pocketti

様々なテーマの動画を紹介する、「スキマ時間を埋める」バイラルメディアです。

上記で紹介したバイラルメディアは、どれも短期間で数多くのPVを記録したと報道されていますが、その裏に潜む危険はまだあまり取り上げられていません。

危険①大手SNS依存

ZingaやPathといった有名スタートアップは、フェイスブックをバックボーンに大きな成長を遂げました。

バイラルメディアはまさにそうしたスタートアップのグロースハック事例を活かして成長した新たなメディアの形になりますが、成長の裏側には、大手SNSの一挙手一投足に成長が依存してしまうという危険性もはらんでいます。

直近だと、昨年12月にフェイスブックが発表したアルゴリズム変更がその最たる例でしょう。

フェイスブックがアルゴリズム変更を発表する前までは、「動画+ちょっとしたテキスト(動画の説明など)」のコンテンツが各ユーザーのフィードに多く流れてきました。しかし、アルゴリズムの変更を機にフェイスブックはよりオリジナルでかつコンテンツ量の多い外部コンテンツを重視する傾向になったと言われているのです。

実際に、アメリカのバイラルメディアとして有名なViral Novaの代表スコット・デロング氏は、アルゴリズム変更後にツイッターで以下の様なことをつぶやいています。

scottdelong

(スコット・デロング氏)

“フェイスブックで100万人のファンを獲得した。投稿のリーチは半減した。

フェイスブックをバックボーンにビジネスを展開するなんて、活火山の麓でマクドナルドを経営するようなものだ。”

フェイスブックのアルゴリズム変更は、外部コンテンツ元により多くの広告費を費やしてもらうための戦略であることは間違いありませんが、Viral Novaのような規模の大きいサイトでもフェイスブックの決定に大きく左右されている事実が存在しているのです。

危険②ページビュー争奪戦

今後バイラルメディアの乱立に伴ってページビュー争奪戦が起こることは間違いありません。

それはまるでグーグルがスパム行為を禁ずる前に、キーワードの詰め込みや外部リンク施策で上位表示を狙うことが出来た当時のSEOに近似する状態が生まれることも予測出来るのです。

「それでもページビューが稼ぎやすいなら広告が入るし…」という理由で今後バイラルメディアが増殖すること間違いありませんが、「ページビュー増加=広告費増加」の時代もいつ終焉を迎えるか分かりません。

広告スペースの価値はページビュー数に重きを置くのではなく、CTRやCVRに加えてユーザーのエンゲージメントを考慮して決定されるべきであり、実際にバナー広告はその方向へ向かっていると言われています。

コンテンツに紛れた形で広告を掲載するネイティブ広告とバイラルメディアの相性も世間では議論されていますが、その可能性は未知数であるのみならず、サイトの文脈に即した動画広告を制作することは容易ではないのです。

*エンゲージメントについての詳細はこちら(他サイト)

バイラルメディア戦国時代を生き抜くために

結論として、(当然ではありますが、)理念と戦略なしに、突出したバイラルメディアを生むことは非常に難しくなるでしょう。

①理念

「おもしろ」、「感動」、「驚き」などなど、ジャンルも何も関係なく、ただカテゴリ分けしただけで理念のないサイトが多く目立ちます。

理念なきサイトは代用がすぐにきくため、「他サイトでも十分」と認識されやすく、認識された時にはサイトの寿命が一気に短縮してしまうのです。その点、dropoutやUpworthyは社会への問題提起や意義のある動画の提供という確固たる理念を持ちあわせており、テーマの一貫性はコンテンツキュレーション能力に付加価値を加えているのです。

②戦略

日本ではほとんどのバイラルメディアが「流行」に乗っかったメディアばかりですが、戦略や差別化なきバイラルメディアの先は長くないでしょう。

例えば最近日本でリリースされた「FastReach」は、バイラルメディアと消費者アンケートを掛け合わせた、一般的なバイラルメディアとは一線を画すウェブサービスです。アメリカで人気を博すUpworthyも、タイトルに工夫を凝らしたことが最大のグロースハック要因の1つと言われております。

fastreach

ローンチしたばかりのFastReachが流行るか否かはまだ推測の粋を出ませんが、「動画を投げればいい」という感覚でバイラルメディアを始めたのでは失敗は目に見えてると言って過言ではないのです。

最後に

本記事では、バイラルメディア流行の理由と、その裏に潜む危険、そして今後バイラルメディアが乱立する時代において欠かせない心得について紹介しました。決して闇雲にバイラルメディアを批判をした訳では無く、数々のWEBサービス形態と同じようにリスクを孕んだサービスだということが伝われば幸いです。