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あなたが売っている物はなんですか?
本日は、こんな一見平易な質問に真面目に回答する記事を、海外記事「People Don’t Buy Products, They Buy Better Versions of Themselves」を翻訳しながらお伝えします。
JobsとiPod
スティーブ・ジョブズがiPodを発表した時、誰もが多少の困惑を隠せなかった。
MP3プレイヤーは既に長い間存在していたし、何をもってiPodが特別なのか明確とは言えなかったのである。
もちろんその後様々な人がiPodが特別である理由を論じたわけだが、その中でも特に注目すべき点は、ジョブズのiPodの売り方ではないだろうか。
「ポケットに1,000曲」
誰もが「1GBのMP3プレイヤー」と製品の機能をアピールしていた時代に、アップルはその先を行った。
アップルは、「ポケットに1,000曲」を持ち歩く、今日よりも優れたユーザーの明日の姿を想起させたのだ。
これがどういうことなのか、私の友人が素晴らしい画像を作成したので、是非ご覧頂きたい。
マリオ(見込み客)
+
ファイアフラワー(プロダクト)
=
ファイアフラワーを食べたマリオ(何だって出来てしまう超イケイケなカスタマー)
という式。
ビジネスサイドはしばしばファイアフラワーを売ろうと試みるが、本来売るべきなのは、「何だって出来てしまう超イケイケなカスタマー」のイメージなのである。
機能とベネフィット
“Here’s what our product can do” and “Here’s what you can do with our product” sound similar, but they are completely different approaches.
— Jason Fried (@jasonfried) November 13, 2013
「このプロダクトが出来ること」と「このプロダクトであなたが出来ること」は同じように聞こえるが、実際は全く違ったアプローチだ。
—Jason Fried, Founder & CEO at Basecamp
この引用文やその他のソースを読み漁って私が辿り着いた結論は、①機能とはプロダクトが提供する「何」であり、②ベネフィットとはその裏に潜む「何故」であるということ。
また、こんな引用文も存在する。
客は1/4インチのドリルビットが欲しいのではない。1/4インチの穴を買うのだ。
—Leo McGinneva
カスタマーは1/4インチの穴を作りたいが為に 1/4インチのドリルビットを買う訳であり、1/4インチのドリルビット(機能)そのものを売るよりも、1/4インチの穴(ベネフィット)を効果的にアピールしたマーケティングの方が成功しやすいということです。
(ドリルビットとか言われてもわかんねーよという方は、「私はSiri(機能)が欲しいのではない。タイピングせずに情報(ベネフィット)が欲しいのだ。」と考えるとより分かりやすいでしょう。タイピングせずに情報が得られるのであれば、ボイスレコーディングでも脳信号の解読でもアプローチはなんだって良いのです。)
要するに、機能とは「このプロダクトが出来ること」である一方で、ベネフィットとは「このプロダクトであなたが出来ること」。そしてマーケティングは後者に焦点を当てるべきであるということがお分かり頂けたでしょうか。
理論はほどほどに、実例を見ていきましょう。
Evernote
すべてを記憶する
(Remember Everything)
Evernoteはあなたのために全てを記憶することは出来ません。
Evernoteは所詮ソフトフェアであり、それ自身では何一つ記憶してくれることも出来ないのです。
しかし、Evernoteはファイルやメモをセーブしたり管理する機能を提供します。
「すべてを記憶する」ということは、あなたがEvernoteを使って出来ること。つまり、ベネフィットを明確に伝えているのです!
会話をはじめましょう。興味を探求しましょう。そして、見識を広めましょう。
(Start a conversation, explore your interests, and be in the know.)
これまた機能に触れることなく、「あなたがツイッターで出来ること」に焦点を置いたタグラインです。
日本語に直訳し過ぎ感が否めないのが少々残念。
Nest
省エネは美しい。
(Saving energy is a beautiful thing.)
正直僕もNestを使ってどうやって省エネ出来るか100%理解しているわけではありませんが、①省エネが出来ること、②(画像とセットで)美しく、スタイリッシュに省エネ出来ることが伝わるベネフィット重視のタグラインです。
【英語版】
デキるビジネスパーソンに。(みたいなニュアンス)
(Be great at what you do.)
【日本語版】
仕事のアイデアや意見を交換しましょう。
英語版と日本語版、売りが異なるタグラインですが、どちらもリンクトインの主要機能であるコネクション作りではなく、そのコネクションを基に何が出来るか、どんな自分になれるかという点に重きが置いてあります。
GitHub
より良い環境でソフトウェアを作ろう、一緒に。
(Build software better, together)
「まさに!」といった感じの、より良い未来を想起させてくれるタグラインです。
実はこのタグラインの下に小さな文字で各種機能(コードレビュー、コードマネージメント、などなど)が書いてありますが、あくまで主役はより良い環境でソフトウェアを作ると言うこと。
ベネフィットから焦点がぶれていません。
最後に
機能とベネフィットの違いに頭を悩ませた方もいらっしゃるかもしれませんが、突き詰めればユーザー目線になり切れているかどうかということ。
本日はマーケティングの考え方としてお伝えした機能とベネフィットの違いですが、商品開発に応用すれば、ニーズや課題に対して既存の枠に捕われないソリューションを生む 力に変えることも出来そうです。