自社サービスのランディングページもしくは登録フローをどうにかしたいと思っている方は多いのではないでしょうか。我々も同じです。

どんなサービスやビジネスにおいても、集客は大きな課題です。特にインターネットサービスにおいては、登録フローの少しの違いだけで、コンバージョン率が大幅に変わり、見込み客をみすみす逃してしまう事になりかねません。逆に言えば、ランディングページや登録フローを改善することで、集客の最大化に大きく貢献することができます。

例えば、月 1,000 人の新規登録があるサービスで、コンバージョン率が 10 % 改善すれば、それだけで 100 人のベースアップになります (当たり前の話ですが) 。つまり、早く対策すればするほど、それだけ多くの恩恵を受けることになります。

今回は、予約システム & 顧客管理「 Coubic (クービック) 」において、コンバージョン率を改善するために行った具体的な方法について、実績を交えてご紹介します。

なお、Coubic (クービック) は 2014 年 4 月 10 日に一般公開しましたが、今回ご紹介する内容は、一般公開に至るまでの、ベータテスターを対象にした試験運用中に行ってきたものになります。

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改善前の登録フロー

ユーザーに会員登録を促すサービスは多いと思います。特に、Facebook の普及により、Facebook ログインを使ったサービスは年々増えています。

スモールビジネス向けに、予約システムを提供しているクービックでも、ユーザーがビジネスオーナーに予約を入れる際に、会員登録を求めていました。

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これは、もともとは空き会議室スペースの予約サービスを想定していたというのもあり、空き家貸出サービスとして有名な Airbnb の登録フローをベンチマークしていたというのが背景としてあります。

そのため、ユーザーが予約する際には、Airbnb 同様、最初に「 Facebook ログイン」もしくはメールアドレスによるアカウントの新規登録を促していました。

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その際、我々は重要な指標の一つとして以下のような「予約コンバージョン率」を定義しました。

予約コンバージョン率 = 予約完了数 / 予約ページ訪問数」

これは、ECサイトを運営されている場合は購入コンバージョン率、ゲームなどのサービスを運営されている場合はゲーム開始コンバージョン率 (アクティベーション率) に相当するものになります。

この後、最初の予約コンバージョン率に対して、後の施策によってこの数値が相対的にどこまで変化したのかについてご説明します。

① 登録フローの順番を逆転して、コンバージョン率を約 30 %アップ

当初は予約コンバージョン率としてベンチマークするものがなかったため、最初の数値が高いのか低いのか、明確にはわからなかったのですが、以下の理由により、予約時における登録フローを見直すことにしました。

  • 当初想定していた Airbnb のようなポータルサイトを作るのではなく、よりビジネス向けツールにフォーカスするようになったことで、アカウントの捉え方が変わってきた
  • ユーザーの本来の目的である「予約をすること」にフォーカスし、まずは予約情報を入力してもらった方がユーザーエクスペリエンス的に良いのではないかという仮説

具体的な施策としては、ユーザーにとって高い心理的ハードルになるであろう「会員登録」を予約フローの後ろに持っていくことにしました。

その結果、当初の予約コンバージョン率と比べて、28 %改善させることができました。

ユーザーに入力を求めている情報量は同じですが、「予約する」という行動の前に、会員登録を促すことの機会損失についてはじめて認識することができ、さらなる改善プランを考えるようになりました。

② 会員登録を後回し、かつ、任意にすることでコンバージョン率を 100 %以上アップ

当初、予約時における登録フローを再検討する理由でもありましたが、クービックとして、よりビジネス向けツールを目指すようになった結果、そもそもアカウント登録を求めることすら不必要なのではないか、と考えるようになりました。

ユーザーからすると、「自分はクービック上のネイルサロンの予約をしている」という認識はないにもかかわらず、クービックのアカウント登録を求められるのは、不自然と感じるでしょう。

当然、最初から把握しておく事だったかもしれませんが、サービスをピボットする前は、アカウント登録を求めるのはそれなりに合理的な理由がありました。

そこで実施したのが、予約情報を入力した後に求めていた会員登録を任意にしたことでした。ただし、「パスワードを入れるだけで2回目以降の予約がスムーズになります」というメリットを明確にして、予約後に会員登録することのメリットも同時に明示しました。

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会員登録を任意にしたところ、予約コンバージョン率が大幅に上がり、結果として、改善前に対して 100% 以上の上昇になりました。

会員登録を任意にすれば、予約コンバージョン率が上がるのは当然だと思われるかもしれませんが、ここで指摘しておきたいのは、ユーザーは、もともと会員登録時に必須項目としていた氏名とメールアドレスを、新たな予約フローでも入力している (クービック会員登録ではありません)、という点です。さらに、当時ビジネスオーナーからの要望としてあった電話番号入力もあわせて要求するようにしました。

そういう意味では、予約時に、ユーザーに入力を求めている情報量は、会員登録を必須にしていた改善前や①の時に比べて多いわけです。それにも関わらず、改善前の予約コンバージョン率に対して 2 倍以上も改善できたのを見て、改めて、ユーザーの会員登録に対する敷居の高さを認識させられました。

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最後に

今回我々が行った改善プランが、我々自身にとって本当にベストなものかどうかはまだ分かりませんし、この改善プラン自体を他社におすすめするものでもありません。

例えば、Amazon や楽天などのように、「そのサイト内」で買い物をするという明確な目的意識がユーザーにある場合は、会員登録の敷居はたとえ高くても、より買い物をしやすくなるというメリットが明確にあるため、購入時に会員登録を必須にすることには意味があります。サービスによっては、会員登録を前提として、どうすればよりコンバージョン率を上げることができるのか、ということが重要である場合もあるわけです。

クービックの場合は、当初はそういったポータルサイトを目指している部分が少なからずありましたが、よりビジネス向けツールを作ることに方針転換したため、それに即した改善をする必要がありました。

今回の改善結果として、クービックのサービスを使っていただいているビジネスオーナーから、「何より、お客様が予約しやすいのは良いですね」とサービスを使い続けている理由を聞くことができたのは、自分たちの改善がビジネスに即した形で行うことができたのだと実感できる出来事でした。

最終的には、自分たちのビジネスやサービスが何なのか、何のためにあるのかということを自問自答し続け、それに即した形で意味のある改善をする、ということがグロースハックの本質なのだと改めて感じています。

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