「急成長サービスはなぜ急成長しているのか?」

誰もが回答を望む質問でしょう。

そこで本日は、海外でグロースハックに関する情報を数多く配信しているgrowthhackers.comの運営者が、Uber、Snapchat、Yelp、LinkedIn、HubSpot、Evernoteを含む急成長サービスのリサーチに基づいて執筆した「グロース企業から学べる10の教訓」を参考に、急成長サービスの秘密を探りたいと思います。

①魅力的なプロダクト体験なしにグロース無し

急成長サービスはそれぞれユニークな成長エンジンを持っている一方で、1つだけ共通点を持っています。

そのサービスにしか提供できない素晴らしいプロダクト体験です。

このプロダクト体験こそが、サービスの成長と成功の基盤となる満足度と忠誠心の高いユーザーを育みます。

LinkedInのように規模が伴わないと「素晴らしいプロダクト体験」を提供出来ないサービスも存在する一方で、全ての急成長サービスは必ずユーザーの前に立ちはだかるギャップを素晴らしいプロダクト体験をもって解消しているのです。

グロースハックとなると必ずプロダクト・マーケット・フィットを耳にするのも、プロダクト体験が非常に重要であるが故のことと言えるでしょう。

②成長への飽くなき追求心

全ての急成長サービスは、グロースに情け容赦なくフォーカスしています。

彼らは文字通りありとあらゆるリソースをグロースに割いているのです。

LinkedInはその最たる例で、彼らの10年にも及ぶ継続的なグロースに対するフォーカスは、成長に終わりがないことを物語っています。

10年の間に幾度も失敗を経験したことも事実ですが、LinkedInの成長エンジンを追求する姿勢は目を見張るものがあります。

③マーケティングはグロースを支える数ある要素の1つでしかない

急成長サービスが伝統的なマーケティングの教科書に頼ることはありません。

急成長サービスはたしかにリスティング広告やメール・マーケティングなども実践する一方で、これらの伝統的マーケティング手法は彼らの持続的な成長のきっかけを作ったエンジンではないのです。

彼ら独自のグロースの教科書にはもちろん伝統的なマーケティング手法も含まれてはいるものの、急成長サービスの大半はプロダクトそのものに成長の機会を埋め込んだ結果と言えます。

たとえば黒のiPhoneに映えるように真っ白のデザインが施されたSquareのカードリーダーや、新たなApp Storeの誕生を境にプロダクト全体の改革を行ったEvernoteの例が従来のマーケティングの教科書に載ることはないでしょう。

そしてこうした施策を行うには、マーケターのみならずエンジニアやデザイナーの力を要します。

SquareやLinkedInのグロースと、グロースを単純な広告のバラマキに依存し、結果的にそのグロースは持続不可能であることが判明したGrouponを比較すればその違いは明白です。

④他と違う道を選ぶ

急成長サービスはどこも既存サービスとは全く異なる道筋をたどっています。

マーケティングプラットフォームのHubSpotがサービス料金に加えて追加料金を強制的に徴収する施策を取ったときには誰もがそれを過ちだと考えましたが、結果としてこの施策はリテンションの向上に大きく貢献しました。

Yelpだって当時は当たり前だったお金を払ってレビューを書いてもらう習慣と決別し、コミュニティを醸成することを第一に考えた結果今があると言えるのです。

⑤ニッチ市場にフォーカスする

今でこそ多くの層に愛される急成長サービスも、最初はニッチな市場にこれでもかというほどフォーカスしていました。

たとえばスナップチャットは大学生や高校生の子供を狙ったし、Squareは零細企業に絞って拡大の礎を築いたのです。

どんなに市場が小さくとも、まずはその枠で1番になることに注力しましょう。

⑥グロースハックは短期的な戦術じゃない

「グロースハック」という言葉がバズワード化したことにより、ほとんど全てのオンラインマーケティング手法がグロースハックと捉えられるようになったことは否定しようのない事実です。

しかし、Airbnbがcraigslistをハックしたように、急成長サービスは独自のチャネルや発想で持続的なグロースを達成しているのであって、リンクスパムで成長した(そしてGoogleから罰則を受けた)歌詞サイトのRapGeniusのそれと混同してはいけません。

⑦スケールしないことをして、スケールするための準備をする

急成長サービスは、ポール・グラハムの金言である「スケールしないことをやれ」というアドバイスをそれぞれの形で実践しています。

いきなり何万ものユーザーを相手にサービスを提供しようと試みるのではなく、少数のコアユーザーのニーズにコツコツと対応し、耳を傾けることでサービスの根幹を築いたのです。

たとえばEvernoteはApp Storeの開設を絶好の好機と捉え、新機能をローンチするたびにApp Storeで新機能をフィーチャーしてもらえるように努めました。

これは決してスケーラブルと呼べる戦術ではありませんが、Evernoteのグロースに貢献したことは言うまでもないでしょう。

これらの急成長サービスは、時同じくしてスケールするために必要な準備を整えていることも言及に値します。

例えばUberは新たな都市に参入する際に利用するプレイブックを保有していますが、これは単にPRのノウハウを集めた教本とは違います。

このプレイブックには、テスト市場で何度でも繰り返し使えるベストプラクティスが結集しているのです。

⑧大切なのは数字ではなく、数字から何を抽出するか

急成長サービスも、そうでないサービスも、分析は必ずと言って良いほど行っています。

しかし、後者は数字からほとんど洞察を得ておらず、結果として成長を実現する原動力を探し当てられず終わっているのです。

たとえば急成長を見せるUpworthyは、全ての投稿に対して最低25のヘッドラインを考案し、それらをテストすることを習慣としています。

急成長サービスはどこも似たようなテスト文化を築いていますが、彼らは皆単に数字を報告し合っているのではなく、数字から成長の原動力をあぶり出し、その洞察を実践に当てはめて成長を遂げているのです。

⑨複数のグロースエンジンを持つ

成長の原動力を複数持つことで、より速い成長を達成できることがGitHubなどの例から分かります。

GitHubは、①ソーシャルネットワーク機能、②コードのマーケットプレイスとしての機能、③投稿プラットフォームとしての機能、④ワークフローを改善する機能など複数の原動力を持ち合わせており、これらがうまく融合した結果として急速な成長を遂げたのです。

Yelpも、強固なコミュニティと豊富なレビューという 2つのエンジンを通じて成長した良い例であると言えるでしょう。

⑩「マジック」に頼らない

持続的な成長を遂げるどんなサービスも、一度に何百万人のユーザーを手にしたわけではありません。

パッと見れば単純に口コミやバイラル効果で拡散したサービスも、その裏には綿密に練られた戦略や仕組みが隠されているのです。

持続的な成長は運によってもたらされるものではないことを十分に理解し、一攫千金のバズを狙ったりすることはもう止めにしましょう。

⑪グロースはチーム・スポーツである

急成長サービスの裏にあるのはグロースチームであり、超天才グロースハッカー1人がいるケースなど全くと言っていいほどありません。

優秀なグロースチームのメンバーはそれぞれがサービスの成長に貢献できることを確信しており、その確信はより使いやすい契約書の作成からSEO施策に及ぶ、サービスを構成するあらゆる側面に表れているのです。