グロースハックに関連するソリューションを起点にして多角的に事業展開するグロースハックカンパニー

片山:本日は取材のご機会ありがとうございます。それでは最初に御社事業内容のご紹介をいただいてもよろしいでしょうか。

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株式会社シロク 取締役 福山敦士 氏(以下:福山):はい。シロクは「グロースハックカンパニー」としてグロースハック(による事業推進およびそのサポート)を打ち出した会社になっています。企業様のグロースハック課題、例えば(アプリやWEBサービスへの)集客、活性化や継続支援、収益をどう最大化するかといったテーマを主に開発視点からサポートをしていく会社になります。

福山:その中でサポートさせていただく方法は大きく分けて3つあります。1つは最も注力しているグロースハックツールの提供事業です。例えばGrowthPushといった配信ツールや、GrowthAnalyticsといった計測ツールなど多数のグロースハックツールを提供させていただいております。

2つ目は(そのツール等で計測されるサービスの)数字をみながら行うコンサルティング事業です。これは数字を見ながらビックデータ解析などを請負で行い、継続率の向上に効く指標を見つけたり、それをモニタリングして改善策を出し、最終的には施策を開発に落とし込むところまで含めてご提案させていただいております。

3つ目はグロースハックを加味した受託開発サービスを提供させて頂いております。ツール/コンサル/受託開発の3つが弊社の事業になっております。

片山:ありがとうございます。グロースハックに関連するソリューションを起点にして多角的に事業を展開されているということですね。お二方の今の役割はどういったことになるのでしょうか。

福山:私はツール・コンサルティング・受託開発の営業をやらせていただいています。

株式会社シロク 取締役 向山雄登 氏(以下:向山):私はクライアントに実際にツールを持って行ってどのように使っていくのかコンサルティングを行っている担当です。また、そもそも会社としてどういうツールを(ソリューションとして)作っていくのかということも含めて、その責任者をしております。

福山:このように説明させていただいて「グロースハック」というと聞こえはかっこ良いのですが、やることは地道な作業が多いので、ツール1つにとってもどういうデータが取れるのかとか何を導き出すのか日々時間をかけて考えています。

開発体制の見直し・サービスの運用改善で売上を500%改善

片山:私は御社と普段から頻繁に情報交換しておりますので、個人としては正直何回もお伺いしているですが、ぜひこのメディアの読者の皆様にもご紹介可能な案件や、事例/イメージを教えていただいてもよろしいでしょうか。

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福山:そうですね。某コンシューマーゲームのクライアントの話ですが、「スマートフォンアプリで収益をあげていきたいけど、中々スマホゲームというかオンラインゲームのノウハウが無いからうまく売上があげられない。」というご相談をいただいたことがありました。

そのクライアントは割と版権の権利モノの良質なコンテンツが多数あったので売上が伸びるとお考えだったのですがうまくいっていないということで、運用改善でスマートフォン事業の売上をどうあげていくかを弊社が担当させていただきました。

最初は数字を見て分析運用すると考えていたのですが、その前に開発体制のところから見直しさせていただきました。また、開発会社が複数に渡ってアプリとサーバー等で担当を分業して作っている体制だったので、もっとたくさんミーティングを開きましょうという提案をして、プロジェクト全体がちゃんと数字をあげるためにどうするかということを一人一人考えて行けるような数字の可視化のスキーム作りや、ミーティングの仕切りもやらせていただきました。

そうして、全員が「ちゃんと数字を上げていくための開発をしよう」、「~という分析をしよう」という意識を持っていけるような体制にしていきました。

片山:ゲームサービスの直接的な数字を介在するだけでなく、ちゃんと役割を明確にするところ(より上位の組織課題のレイヤー)から入っているということですね。

福山:はい。そしてその後に離脱率の分析などに入らせていただきました。最初は数値を取っているのに(集計だけで)分析をしていないとか、ずっと同じ数値を見ているだけところがありましたので、どこに問題があって、そのためにどういう改善策を考えていくことがパターンとして考えていけるかまでサポートさせていただいていました。

そうするとだんだん参加しているクライアントさんや開発会社のメンバーも勘所がつかめてきて、段々とそのミーティングが盛り上がり、サービスの売上も最終的に500%改善しました。

片山:チームとして盛り上がっていくと数値も大きく伸びるものなのでしょうか。

向山:急激にその成果があがるのではなくて、まずは徐々に成長していく仕組みをいれていくという感じです。

福山:まさに「階段型」と言われていて、1%、2%と改善してそこからまた数字が伸びていくみたいな、階段状に数字が上がっていくようなイメージになっております。

片山:その事例にしていただいたゲーム会社さんは版権持っているということで、大きな会社だと思います。そういう大きなクライアントの中でツールを入れてグロースハックのPDCAを回すと言うのは、割と(コミュニケーションや運用の)負荷が大きいから社内で導入していく時は大変だと思うのですが、営業としてソリューションの導入をしていく工夫があったら教えていただきたいなと思います。

手法と設計をパッケージで提供し、サービスをグロースハックさせる

福山:ありがとうございます。ツール単体で「PUSH通知ができるツールです!」というと割と嗜好品に近く見えるツールが多いのですが、組み込む方法や使う方法等の作っていく部分と、どういう分析や改善手法の設計があるか頭で考える部分の2つ両方の部分を弊社が提供して、そこまでサポートすることで入れやすくしております。

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片山:手法と設計を2つをセットでパッケージ的に提供できると導入のハードルが下がっていくということですね。他のASPやSDKでも言えそうなある種普遍的な示唆ですね。

福山:そうですね。大体ツールの説明をすると「素晴らしいツールだね!でもどう使っていいのかわからない。使いこなせるかわからない。」とおっしゃるクライアントさんも多いので、その課題に関しては、コンサルという形で使い方の部分をサポートさせていただいております。

また、「いいツールだけど、開発リソースが無いなあ」と言われたら、「では組み込む部分までやります。」という形でその2つの部分が我々の強みになっています。

片山:そういった部分は外注ではなく自前主義的にやっていきたいクライアントもいると思うのですが、さっきの事例も一部そうなのかもしれませんが、クライアントチーム自体の教育や啓発も行っていらっしゃるのでしょうか。

向山:はい。これまで色々なチームを見てきたのですが、売上目標1億円というのが例えばあった時に、その売上目標1億円に対して、それ逆算して細かく(収益化までの設計の要素を)分けられているかっていうところが全くできてないところが多いですね。

例えば1ヶ月で1億円売り上げるのであれば、それを1日単位で細かく区切って、それに対してどういう打ち手があるかを考えていくべきですが、それができていなかったりします。ですので、目標設定をして、その過程や数値を可視化していく仕組みをつくって提供していくことをやっておりました。

グロースハックのノウハウをどうキャッチアップしていくのか

片山:そういうところのキャッチアップや学習は、御社は事業ドメインがグロースハックですので、業務をやりながら知見貯まると思うのですが、それ以外でキャッチアップする場所とか書籍とか、今ご自身でやっていらっしゃることを含めてインプットしているものやメディアあれば教えていただきたいです。

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向山:そうですね。打ち手に関しましては、ベンチマークする市場に出ているアプリを決めて、例えば「君は地図系アプリ」等の担当を決めて、それを毎日触っていきます。そして、アップデートがあった場合にどういうアップデートがあったのか、ストアのアップデート情報を見たり、実際に触っているとわかるので、何がどう変わったのかと、なぜそれを変えたのか変えた理由を考えて、それをチームに共有していくと言うことをやっています。

片山:いいですね。まさに実学って感じですね。私も今の業務に携わるようになってから面白いと思ったアプリのキャプチャを貯めています。

福山:私はそのアプリがどうアップデートされたかという本質のストーリーを実際に作った人にヒアリングをして聞いています。(向山さんの挙げたような)定点観測はもちろんやるのですが、なぜその判断に至ったのかという想いとかだったりとかを訪ねています。

例えば、弊社グループの事業であるアメーバのぺこりというサービスに関しては、「そのUI改修を注力して最先端のフラットデザインにしてクールに決めた時に、ユーザー層が割と主婦でそれが受け入れられなかったからUI元に戻したら、結果的にあがりました。」みたいな一連のストーリーをケーススタディとして貯めています。

もちろんグロースハック施策は万人に共通するものが中々ないのですけども、そのケーススタディを元に積み重ねていって、ではこの会社のこのサービスにどう活かせるかというのを、都度都度知恵を振り絞りながら提供しています。

片山:面白いですね!その事例集めてデータ販売したら売れそうですね(笑)

一同:(笑)

福山:継続率上げる施策の発信は弊社も社外にも出しているのですけども、それは「点」でしかないので、もちろんそれを(元に得られた知見を)どう活かすかが重要でかつ難しく、しかも人の手がかかるものなのだということを感じます。

片山:勉強になりますね。(そういう業務や日々のインプットの中で、)最近のグロースハックの潮流として感じていらっしゃることはございますか。ある意味御社のソリューションがその最先端の1つなのでしょうけど。

向山:そうですね。実際世の中の様々な情報源で「これをやったから、これだけあがった」とグロースハックに関する記事や書籍が出ていると思うのですが、一方でそれが割としっかり開発が必要とか、実際に運用する人間からすると、中々すぐできないものが多いなということを感じます。

その中で例えばアプリのアップデート等、改修がかからない打ち手、運用の中でできる打ち手はいいなと思います。例えば、アプリ内のポップアップを出せて、ユーザーをイベントや課金に促す際にABテストが実施できるものだったりとか、一運用の人間として、エンジニアの手なしに手軽に施策を打てるものが印象がいいですね。

片山:いいですね、ここからこう自然に(御社新製品の広告告知を)入れていくわけですね(笑)

一同:(笑)

片山:最新のトレンドの話題から自然な形でセールスにいける流れがいいなと。この記事はちゃんと製品出てから公開するので大丈夫ですよ(笑)

向山:笑ってるから変なこと言っているのかなみたいな(笑)

片山:すいません。
(補足)Growth message
スマートフォンアプリのポップアップ配信ツールです。
*この取材の時はまだシロクさんは開発中でした。

向山:でも本当にそういうプロダクトをすごく僕がやりたいと言ってきていました。日々現場にチームに入って改善しているので、エンジニアを入れると動かすのが大変ですね。彼らが作りたいものが決まっていたりすると動けないので、最小工数で動かせるものがないかっていうので、ポップアップを出せるものあるといいのではないかと思っていますので、速く作ってくれって言っております。(笑)

片山:リリースが楽しみですね。

「最小工数最大成果」でグロースハックに取り組む

福山:今向山の口から出ましたけれども、「最小工数最大成果」が僕らのグロースハックのソリューションの中で大事にしている考え方です。

その大きい改修を入れる、例えばゲームでCVCバトルやリアルタイムバトルを入れるなどは、確かに売上上がるのですが、開発負荷を考えれば、割とトレンドが変わる可能性があるので、そこ(のユーザー満足度の向上)を文言変更で済むのだったらすぐやりたいと思いますし、そういう需要は今後も増えていくのではないでしょうか。

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また、もう1つトレンドといっていいのかわからないですけれども、SDKの統合をやっていきたいと考えております。例えばPUSH通知機能のSDKはこれ、トラッキングのSDKはこれですという風に、まさにSDK合戦じゃないですけど、入れるたびに重くなってしまいますし、開発コストもかかってしまうのが、現場の課題としてありますので、1つのSDKでなんでもできると言うのが、これもトレンドなのかなと考えています。

(補足)Growthbeat
シロクさんの出していたSDKが統合された総合グロースハックツール
1つのSDKでPUSH、メッセージ配信、アクセス解析が可能。

片山:それはとてもニーズがありそうですね。SDK間で干渉して落ちてしまうというのはありますしね。(SDKいくつもアプリに入れる提案して)また検証するっていって、工数や見積もりも増えて、いざ入れて落ちたら私が怒られるみたいなのがなくなってほしいです(笑)

一同:(笑)

向山:他にトレンドというかわからないですけど、Vineがアプリアップデート中もコンテンツ読み込んでいて、アップデートしている途中でも動画を見られるようにするとか、アップデートしていく中でキャッシュを溜めて行って機内モードでもずっと動かせるとか、そういう風にソーシャルゲームや他のアプリも情報がリッチになっていくとダウンロードで、時間がかかったり、電車の中だとあまり電波が悪くなったりしてユーザーの体験価値が下がるので、それを避ける工夫は1つこれからさらに必要になると思います。

それこそ画像を読み込むのに2秒も待っているとすぐに不快に思うユーザーもいるので、ポップアップとかみたいな手前の打ち手でユーザーに情報を出しておくことも大事だなと思っています。

片山:確かにそのVineの設計考えた人はかなりユーザー体験を考えていますね。ありがとうございます。それでは最後に今後の事業方向性やアピールしたいがあれば教えてください。

福山:はい。引き続きグロースハックというドメインの中でAARRRモデルに即した事業モデルというのが事業方針ですので、継続率を上げていくための施策とか、特に今後はマーケティング寄りの獲得とか、いかに使ってくれるユーザーを獲得するかという部分への注力、そしてリファラル(招待)ですね。

本質的に良いサービスを作ることが招待につながるのですけれども、その抜本的な課題があるところもツールで解決できないかということを考えています。

片山:マーケティングと絡めたような新しいソリューション開発はぜひ一緒にやっていきたいです。それで広告の認知からユーザー獲得、AARRRでいう最後の収益化のまでところまで統合的に提供できるのは価値が大きいと思います。

向山:そうですね。弊社は運用しながら課題を見つけてそれをツールに落とし込んで探していて、これはツールで解決した方がいいのではないかという形で社内に持ち帰ってプロダクトにするか考えているということをこれからも続けていきたいと思います。

片山:これからも大変楽しみにしております。ありがとうございました。

●取材を終えて
シロクさんとは役員の皆様含めて、最初に個人ベースでお知り合いになったタイミングでいうともう5年近く前から、そして電通に入社してからも数年前から既にお取引があったのですが、改めて取組を取材という視点で掘りなおしたことで、彼らの思想や考えに触れる有意義な機会にできました。

これからもグロースハックツールの開発も含めて応援しておりますし、グロースハックという言葉は一種のバズワード的な性質を感じますが、IT/WEBサービスが存在する以上、その成長運用改善のリーディングカンパニーの1つとして目が離せない企業だなと個人的に考えています。