2019年2月20日、東京・恵比寿でOutbrain、amana、ALPHABOAT、indaHash、Teadsの5社による 共催セミナーが開催されました。セミナーテーマは、『ユーザーが「自分ゴト化する」共感型コミュニケーション』。スマートフォンの定着とデジタル・ネイティブ世代の増加に伴い、動画広告の主要プラットフォームが、テレビだけでなくオンラインへと広がっていった今、動画広告はよりターゲティング、パーソナライズしやすくなっています。しかし、ほとんどの企業は、既存のテレビCMをそのまま他のプラットフォームに転用しているのみ。
ターゲットユーザーごとに「適切なフォーマット」「適切なメッセージ」でのコミュニケーションを設計するためには、どのような工夫が必要なのでしょうか?
「マルチ・フォーマット」×「マルチ・メッセージ」をうまく組み合わせることで、ユーザーごとにパーソナライズ化させて、一人ひとりに「自分ごと」だと感じてもらうためにはどうすればいいのでしょうか?
第一部では、サッポロビール株式会社 / ブランド戦略部宣伝室 シニア メディア プランニング マネージャー福吉 敬氏を登壇者に迎え、企業の代わりにインフルエンサーが発信するCGMプラットフォームと最新の動画広告の活用について、事例を交えながら紹介します。
4マスに接触する人が減り、デジタルもアドブロックされる時代に何ができるかを考えた
イベント冒頭、今回のテーマについて口火を切ったのはサッポロビールの福吉氏。
「男は黙ってサッポロビール」などの名コピーを例に挙げながら、「コミュニケーションの主軸にあるものって、“ワン・ビジュアル、ワン・メッセージ”。すごく強いコピーとすごく強いビジュアルを打ち出すことで、ひとつのメッセージを伝えることはずっと続いている」と説明しました。
しかし、世の中は変わってきました。
「(広告として)一番強いのはテレビですが、一般的にテレビを観る時間が減ってデジタルの可処分時間が増えていて、若年層にいけばいくほどその傾向にあるのが現実です。だけど一方で、H8年の情報量が100だとすると、H18年には5,300、つまり530倍にもなっています。なぜなら、当時はパソコンがそこまで普及していなかったし、デジタルサイネージもなかったからです」。
情報が溢れかえっている現在において、多くの人が情報を得るデバイスはスマートフォンをはじめとするモバイル端末。そんな中、自分に不要な広告をカットするアドブロックを活用する人も増えており、せっかく広告を打っても、伝えたい相手に伝わらないという現象も起きています。
(サッポロビール株式会社)
「今までの方法では届かなかった人に届ける」を目的に広告を打つことを決めたサッポロビールが、そのためのパートナーとして選んだのが、Teads Japan株式会社、indaHash、アウトブレインジャパン株式会社の3社。それぞれ、独自のソリューションに注目が集まっている会社です。
フォロワーが多いインスタグラマーが必ずしもインプレッションするとは限らない
「私たちが扱っているのは、ベストエンゲージメントビルディングプラットフォームです。大事なのは、リーチではなくエンゲージ。インフルエンサーマーケティングによって“伝えるプラットフォーム”を開発しています」。
(indaHash)
量と質の両方を担保できる人材のみをインフルエンサーとして承認した上で、登録者に公募型でキャンペーンごとに通知を行い、「どういう投稿が可能か」をチェックしているため、クライアントはクリエイティブ軸でジャッジすることができるというものです。また、承認されたコンテンツが投稿された後は、すべて二次利用可能なことも大きな強みとなっています。
「これまでだとキャスティング会社がリストを出してきて、『何万人のフォロワーがいますよ』と提案されるのが一般的でしたが、実際の広告成果について、我々は担保されていませんでした。ところがindaHashさんのは違う。ブランドが伝えたいことを意図して伝えることができるのが画期的だと思い、取り組みを開始させてもらいました」と福吉氏も採用を決めた時のことを振り返ります。
静止画動画問わず大切なのは、「瞬時にお客の心をとらえること」
続くTeads Japanの今村氏は、「弊社は広告におけるクリエイティブの制作支援から実際の配信までを提供するプラットフォームです。特徴は、botの排除、ブランドにふさわしくない媒体などを排除することで、広告主のブランドを絶対に傷つけないこと。また、ディスプレイに現れた時点で初めて(課金を)カウントさせていただくということで、観られていない広告に対する請求は一切ありません」と挨拶。
さらに最近では、企業が持っている素材をデバイスに対して最適化する業務にも力を入れていると説明しました。
「テレビCMは15秒で起承転結を作ってメッセージを伝えるものです。でもスマホメディアは一瞬でお客の心をキャッチしないとその先の接触時間はないので、静止画動画関係なく、いかにお客の心を掴むかを主軸に据えて広告を制作しています」。
(Teads Japan株式会社)
時間帯ごとに異なるペルソナを設定
続いてはアウトブレイン。
「我々はオンラインメディアの記事の下に『次にあなたへおすすめ』という形でユーザー様に次のレコメンデーションを提供している会社で、広告をクリック単価ベースで出稿いただけます。目指すところは、ひとつの記事を読み終わった後にもう1記事何か読みたいなという読者に対して、ディスカバリーモードといわれるところでの広告主です」と同社嶋瀬氏が説明すると、福吉氏は、「コンテンツを観るモチベーションを持っている人の興味を刺激して連れてくるところ、『次に読みたいものはなんだろう』をアルゴリズムで当てるところがおもしろいですよね」と笑顔を見せました。
さらにこのアルゴリズムに関して嶋瀬氏は、「さまざまなモーメントごとにペルソナを設計しているのですが、朝のペルソナと夜のペルソナは全然違います。朝の媒体と夜の媒体を広くカバーすることで、ユーザーが観たいものを観たいときに表示できるのが我々の強み」と言葉を足しました。
(アウトブレインジャパン株式会社)
Insta投稿の二次利用でエンゲージメント率が数倍にUP
各社のこうしたソリューションをもとに何を展開できるかを考えたサッポロビール。
今回の広告展開にあたり、まずはindaHashに、「黒ラベルで乾杯するシーン自体をリーチにかけてください」とオーダーしました。
「よくあるインフルエンサーマーケティングだとみんなコピペで文章が一緒。でもindaHashだと一人ひとり違うメッセージが出てくるのがよかった。しかも二次利用可能だから、我々のサイトのコンテンツとして埋め込むことができたんです。一つひとつのパネルを押すとメッセージが動く点も魅力的でした」と福吉氏。
もちろん、結果も上々。
「今回のサッポロさんの件に限らず、過去の投稿で嗜好がマッチしていないインフルエンサーは選ばないようにしています。そのうえで、協力してもらうインフルエンサーにはきちんとブランドへの理解や共感を求めて、ブランドストーリーを伝えてもらっているので、通常はハッシュタグをいれても1~2%のエンゲージメント率なところ、今回は6%を達成できました」と野村氏は明かしました。
(株式会社アマナ)
Instaの投稿をクリエイティブに可変することでさらに魅力的に!
続くTeadsは、2パターンのバナー広告で勝負に出ました。
「1つは、既存の動画・静止画素材をもとにクリエイティブを最適化したもので、もう1つは、indaHashさんがリアルタイムで生成してくるインフルエンサーさんの静止画を、スマホをスクロールすることでクリエイティブに可変していくものを作りました」。
今村氏の言葉を受けて福吉氏は、「説明を聞いてすぐ、そんなおもしろいことはすぐにでもやりたい! と即決しました。ビールが一番おいしそうに見える瞬間を切り取ってコピーをのせて、それを動画にして動きをつけるなんてすごく興味深くて」と当時を振り返ります。
もちろん、効果も一目瞭然。「有効トラフィックは99.9%、ベンチマークは94%を上回り、ブランドセーフも98.7%を達成できました。でも、一番特徴的だったのはアベレージインビュータイム(=広告に接触したタイムの平均)。12.8秒も接してくれていたし、ベンチタイムは1.7秒でした」と今村氏も語ります。
ユーザーの能動的な行動を誘発するユニークな施策
また、アウトブレインはクリック再生型動画「FOCUS」を活用。動画の再生ボタンをクリックすることで初めて再生されるスタイルのため、興味を持ったユーザーのみが主体的に視聴できるのがこの広告の大きな特長です。
「クリックするとフル画面表示になって、終わった後に次の動画を選べるということでエンゲージメント性を高めています。また、(今回はアルコール商品のため)未成年は配信を除外して、夕方以降のパフォーマンスが高くなる時間帯を狙いました。さらに、サムネイルにUGCを活用することによって効果を検証することで、新しいユーザーを連れてくることにも成功しています」と嶋瀬氏。
福吉氏も、「60秒の長尺に観たことがないようなUGCが出てきて、終わるとさらに次の動画を選択できることで、能動的な行動を誘発していますよね。エンゲージメントの高い人は『もっと観たい』という気持ちを持っているでしょうし、さらにエンゲージを高めるためには非常におもしろいクリエイティブだと感じました」と納得。
これらのソリューションを活用したことで、「indaHashの、自分の言葉で発信するユーザー目線に近いコミュニケーションとその多様性を知ることができましたし、アウトブレインやTeadsのプレミアムな面での発信では、これまで届かなかった顧客にアプローチできたのもよかった」と福吉氏。
ブランドの可能性が大きく拡大されたことで、これまでとは異なる形でのメディア発信に大きな意義を感じることができたと締めくくりました。