フェイスブックに依存しているのは、何も一般ユーザーだけではありません。

コンテンツをYoutubeに、マーケティングチャネルを既存ソーシャルメディアに依存しているバイラルメディアは、メインとなるトラフィック源故の危険性に晒されており、予てより危惧されてきた依存の怖さが今データとして明らかになり始めています。

有名バイラルメディアのトラフィックが大幅減

以前に『「バイラルメディア」流行の裏に隠された2つの危険』というタイトルの記事でもお伝えしたように、昨年末に実施されたフェイスブックのアルゴリズム変更以降、Viral Novaを含むいわゆるバイラルメディアへのトラフィックが大幅に減少しています。

上述の記事ではViral Novaの監修者スコット・デロング氏のツイートを引用してトラフィック現象の様子をお伝えしましたが、ウェブサイトのトラフィックやデモグラフィックに関する統計を提供する「Quantcast」は、フェイスブックのアルゴリズム変更がバイラルメディアに与える影響の裏付けとなるデータを公表しています。

upworthy

上図は、米国で有名なバイラルメディア「Upworthy」のトラフィック推移を表したグラフです。

昨年11月まで順調に上昇していたトラフィックは、12月にかけて下降の様相を呈しており、フェイスブックがアルゴリズム変更を行なったとされる11~12月のタイミングとぴったり一致しています。

なぜ?一人勝ちするBuzzFeed

フェイスブックはアルゴリズム変更の理由を「上質なコンテンツをフィードに表示するため」と説明していますが、実際は「広告収入を拡大するため」なのではないかと噂されています。

そんな噂を後押しするのが、同じく「Quantcast」から入手したバイラルメディア「BuzzFeed」のトラフィック推移を表す以下のグラフです。

buzzfeed

昨年11~12月にトラフィックの減少が見受けられた「Upworthy」とは対称的に、「BuzzFeed」のトラフィックは平行どころか上昇を見せています。

なぜこのような差が生まれたのでしょうか。考えられる理由は2つ存在します。

①記事のクオリティ

グーグルが悪質なSEO業者や上位表示施策を一斉に取り締まったときと同じように、フェイスブックも上質なコンテンツの視認性を高めていると公表しています。

フェイスブックが考える上質なコンテンツの定義は、「過去の利用履歴に基いて算出される、ユーザーが強い関心を寄せるコンテンツ」であることを除いて定かではありませんが、フェイスブックのエグゼクティブであるクリス・コックス氏は良くも悪くもバズフィードの特徴である有用性の低いくだらないニュースを提供する「BuzzFeed(バズフィード)」を毛嫌いしていると伝えられており、「Upworthy」や「Viral Nova」に比べて圧倒的に「BuzzFeed」が提供する記事の品質が評価されているとは考えづらいでしょう。

②広告出稿

記事のクオリティが関係ないとすれば、やはり見過ごせないのはフェイスブック広告の効果です。

フェイスブックでは、企業やウェブサイトが所有するページのいいね数を増やすための広告のみならず、ひとつひとつの投稿の視認性を高めるための広告が存在します。「BuzzFeed」は他のバイラルメディアに比べてこの類の広告枠を大量に購入していると伝えられており、その結果としてトラフィックの減少を免れたという推測が濃厚なのです。

フェイスブックのアルゴリズムに関する詳細が不明である以上、記事のクオリティがどれだけ各バイラルメディアのトラフィックに影響を与えているかは推測の域を脱しません。しかし、フェイスブックにおけるバイラルコンテンツの視認性が低下していることは各データや報告を見てもおおよそ正しいと考えられ、こうなるとバイラルメディアは「広告収入を得ては広告費用を割く」サイクルにはまり、フェイスブックのエサと化してしまうのです。

成長を広告費用に依存させないことはグロースハックの鉄則であり、「興味深いコンテンツをSNS経由で発信する」以外の価値付けや、広告費用に依存しないマーケティングチャネルの発掘が必要なのは明らかです。

流行に乗ってUUやPVを増やせる今だからこそ、先手を打って知恵を絞ることが各バイラルメディアに必要とされているのです。