Translated by Takaya Uchida
「オーガニックな口コミ」による流入は昔から、そして今なおスタートアップにとっておそらく最も魅力を感じるマーケティング形態でしょう。
自身のプロダクトを友人や同僚に紹介してくれる人がいるというのは、そのプロダクトが良くて人々に求められていることを示す最も確実な証拠です。
一方、新規ユーザーにとっては知人からの「オーガニックな口コミ」が最もそのプロダクトに関して理解しやすい方法でもあり、信頼を置いている人からの推薦は、人々に自身と相性のよい素晴らしいプロダクトを発見することも容易にしてくれるのです。
本記事ではプロダクトを最も頻繁に使ってくれているユーザー(パワーユーザー)をリファラルに活用するオフライングロースハックテクニックを3つ程ご紹介します。
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リファラルとバイラルの関係性
グロースハックの専門用語を使うならば、「リファラル」とは新規ユーザーを自社のプラットフォームに招待するプロセス、すなわち、人を招待することから始まり、彼らが新規ユーザーとしてサインアップしてくれる一連の流れのことを指します。
また、既存のユーザーが新たなユーザーを招待することをバイラルループと呼んでいます。
Andrew Chenはバイラルループを
既存のユーザーが新規のユーザーを招待する上で取る一連の手順
と説明しています。
さらに、リファラルが上手くいっているかどうかを判断する指標をバイラル係数と呼び、バイラル係数は既存のユーザーがコンバージョンできる新規のユーザーの数を表しています。
バイラル係数の計算式は以下のようになります。
リファラルマーケティングは上手くいくのか?
最初に申し上げてしまうと、リファラルを活用したマーケティングは非常に効果的です。
例えば、growth hack japanでも度々取り上げているAirbnbはプロダクトグロースの内、リファラル起因のグロースが30%もの割合を占めています。
リファラルに関する最先端の手法にご興味がある方は「リファラルを飛躍的に向上させることが実証されている11のテクニック」も是非参考にしてみてください。
なぜパワーユーザーがリファラルに重要なのか?
あなたにとってのパワーユーザーとはどのようなユーザーなのでしょうか?
パワーユーザーとは、あなたのプロダクトを誰よりも先に使ってみて、あなたにフィードバックを提供し、プロダクトに関する内容をSNS上で言及し、その後もプロダクトを頻繁に使用し、さらにあなたのプロダクトを(自身の便益のために)より有効活用できることに喜びを感じているような人達です。
プロダクトの提供側としては、ユーザーがプロダクトを通して行っていることに上達することを常に後押しすべきでしょう。
カスタマーサービスを通してユーザーをプロダクトの伝道者に仕立て上げるように努めることが重要なのです。
スタートアップがリファラルの仕組みにテコ入れするには、パワーユーザーを活用することが最適なのですが、その理由は:
1. 量ではなく質
スタートアップして間もない段階ではおそらくまだ沢山のユーザーは獲得できていないことでしょうが、自社プロダクトに強い関心を示しているユーザーはいることが考えられます。彼らはあなたのプロダクトに興味を持ってくれているため、プロダクトの提供側としては彼らと交流を持ち、パワーユーザーになってもらうことを直接的に働きかけることができるのです。プロダクトのローンチ直後は多くのユーザーではなく、数少ない熱心なユーザーがいることの方が重要なのです。
2. 思想的指導者
多くの場合、プロダクトが魅力的なものであれば、プロダクトが位置するニッチな分野の思想的指導者やインフルエンサーが最初にあなたのプロダクトを試しに使ってみることでしょう。これは、インフルエンサーである人々は一足先に最新ツールを使ってみることによって他の人よりも抜きん出ることを常に模索しているからなのです。インフルエンサーがリファラルに寄与してくれることはグロースを後押しする大きな力となってくれます。
質の良いアクティブユーザーはあなたのプロダクト上でシェアボタン等をクリックしてくれます。
パワーユーザーはこれよりさらに進んでより多くのことを実践してくれ、以下で「より多く」の部分を述べていきます。
リファラルを増やすためにパワーユーザーを活用する3つの方法
あなたのプロダクトを心底気に入っているユーザーは、プロダクトへのロイヤリティを見せびらかします。
あなたの仕事は彼らのプロダクトに対する情熱を受け入れ、彼らにさらに一歩進んだ行動を取ってもらうことにあるでしょう。
彼らがただの「アクティブユーザー」であった場合は、彼らを熱烈なアクティブユーザーに変える必要があり、既にパワーユーザーであった場合は以下でご紹介する3つのテクニックによって、彼らに数十倍もの人にプロダクトを紹介させるように仕向けることができるのです。
これから紹介する3つのテクニックは技術的に難しい点は一つもなく、費用のかかるものでもありません。
3つのテクニックが強力なのは、デジタルな世界から実世界に影響を及ぼせることにあるのです。
1. ステッカーは常にパワーユーザーに喜ばれる
最近シリコンバレーを訪れたことがある人ならば、おそらくいくつものシールで埋め尽くされたMacbook airが目についたことでしょう。もはや軍人が上着に付けている数々の勲章と同じにすら見えてきます。
自分のパソコンにプロダクトのシールを貼るのはどのような人達なのでしょうか。
それは、そのステッカーが示している企業で働いている人か、そのプロダクトを熱心に使っていて、使うことが自身の価値観の一部を表していると信じている人かの2択です。
MacユーザーはMacへの熱烈なファンが多いことで知られていますが、彼らはどのようなシールであれば自身の貴重なMacbook airに貼るのでしょうか? 見栄えが良いステッカー? それとも機能的なステッカー?
そもそも機能的なステッカーとは何でしょうか? ずばり、それは価値を提供してくれるステッカーなのです。
Evernoteが実行したグロースハックは機能的なステッカーの良い例です。
Evernoteは皆さんもご存知の通り、人々がネット上で見たことを収集し、それに関するノートを取ることを可能にするサービスです。
これによりEvernoteは、人々が仕事の会合やミーティング中に会合内容のメモを効率よく取リたい場合に使うツールとしての立ち位置を確立しました。
しかし、これはユーザーが会合中もパソコンも開いていることを意味し、「会合とは関係ない作業を他人が話している間にしていて」話を聞いていないように他人から見られているかもしれない、という居心地の悪い思いをEvernoteのユーザーに誘発してました。
そこで、Evernoteはこの問題を解消すべく、ステッカーを作りました − 安定したリファラルの獲得(ステッカー見た全ての人はそれを貼っている人がEvernoteを使っていることが一目で分かる)するとともに、ユーザーにとっても会合中にパソコンを使うことに対して申し訳なさを感じる必要がなくなったという点で、双方にとってお得な方法でした。
下のスクリーンショットにあるステッカーには「私は失礼な態度を取っているわけではありません。Evernoteでミーティングのメモを取っているのです。」と書かれてあります。
ステッカーの見栄えや品質の良さでパソコンに貼りたいと思わせることに成功したサービスにはBufferが挙げられます。
Bufferのステッカーは企業ロゴが記載されているシンプルなステッカーですが、非常に上質な素材で作られているのです。
2. ITオタクは自己主張の強い面白おかしいTシャツが好きである
多くのインフルエンサーやパワーユーザーはある分野に関する知識が非常に深いオタクであることが多いです。
私自身も大学院での専攻が海洋物理学というニッチな領域であるため、オタクの一員であると言えるでしょう。
誰しも独創的なTシャツは好きです。Tシャツはいつの時代においても流行り廃りがなく、70年代のビンテージ物であろうと、アーティストのライブコンサートで手に入れられるTシャツやスタートアップのロゴが入ったTシャツであろうと安定した人気があります。
Tシャツとは見栄えさえ良ければ後は何だっていいのです。
では、ユーザーにとってスタートアップのTシャツを価値ある物とする要素何なのでしょうか?
ⅰ) ロゴを強調しない
Mixpanelがプロダクトを頻繁に使ってくれるユーザーに贈呈するTシャツのデザインから学べることは、Tシャツに大きな文字で「Mixpanel」とは書かれていないということです。これは、人々は広告塔となるようなTシャツを着たがらないからなのです。その代わりにTシャツの表には「私はデータを重視する(I AM DATA DRIVEN)」と書かれており、この文言はMixpanelがターゲット層としている人々の考え方と共鳴するものです。さらに、着ている本人にとっても「私はスタートアップのデータ分析にTシャツをもらえるくらいMixpanelを活用しており、それほどまでにグロースハックに熱意がある」という意思表示をTシャツが周囲に代弁してくれる利点もあるのです。
ⅱ) Tシャツの品質が良いこと
ユーザーに低品質なTシャツを送りつけることはやめましょう。長い期間にわたり使い続けることができる品質であると共に、着た本人の見栄えが良くなるようなデザインであることが重要です。人々は「入手可能な物の内、最もちゃっちいTシャツ」ではなく、品質が担保された綺麗なTシャツに腕を通したいのです。
3. 感謝状に人間味を加える
マーケティングがデジタル化されればされる程、人間的な暖かみの魅力が増しています。
もちろんパーソナライズの例として、あるサービスにユーザー登録したら自分の名前宛にメール送られてきたり、プラットフォームの使用手順に関する説明に自分の名前が表示されるようなことは実施されていますが、これらは本当の意味でパーソナルではありません。
本当の意味でパーソナルであると言えるのは、実際に人の手によって書かれたメモなのです。
熱心なユーザーやパワーユーザーが抱く可能性がある唯一の不満として、その人がプロダクトに向けている情熱に応えてくれるだけの注目をプロダクト提供側から得られないことが挙げられます。
この不満を解消する方法として、提供企業が一肌脱いで、そのユーザー宛にプロダクトチームのメンバーから手書きの感謝状を送らせることが実際にアメリカでは行われています。
個人から直接言われた「ありがとう」がなぜリファラルの成功に寄与するのでしょうか?
1. 手書きである
事前に社内で作成されていた文面であったとしても、誰かが自分の時間を割いて机に向かい、ユーザーのためだけに文章を書いてくれたのです。
2. 個人の名前でサインしてある
手紙の終わりにある署名が「開発チームより」ではなく、Lizという個人名なのです。このことにより、手紙がよりイカしてるものになり、人間味も加わるのです。
3. プロダクト提供側があなたがユーザーであることにありがたみを感じている
感謝状の手紙は「私たちのプロダクトはイケてるよね」といった内容ではなく、ユーザーがプロダクトの使用に割いてくれている時間と努力に感謝の意を表しているのです。
4. 昔ながらの紙媒体で手元に届く
今の時代、一体誰が個人宛に手紙を郵送してくるでしょうか? 郵便ポストに届くのは電気代の請求書や広告紙くらいでしょう。しかしながら、現代人の多くはその感覚を忘れてしまったかもしれませんが、友人から手紙をもらう程わくわくする経験はありません。紙媒体の感謝状の送付によって、長い間行方不明だった友人から手紙が送られてくる喜びと驚きをプロダクトの提供企業はユーザーに提供できるのです。
これらの手紙を送られてきたユーザーの多くが最初に取る行動は、手紙の写真をとりInstagram、TwitterやFacebook等のSNS上にプロダクトと送り主である企業が如何に素晴らしく、ユーザーへの思いやりがあるのかという文言と共に写真をシェアすることでしょう。
プロダクトの提供側が如何にユーザーに気を配れるかということを、プロダクトを甚く気に入っているユーザーが拡散してくれることに勝るリファラルの方法はないでしょう。
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最後に
パワーユーザーに感謝の気持ちを表すことを忘れないようにしましょう。彼らは必ずやあなたの感謝の気持ちに応えてくれるはずです。
本記事は Are You Missing Out On These 3 Powerful Offline Referral Opportunities ? を参考に執筆したものとなります。